いま、ねじまき鳥クロニクルという村上春樹の小説を読み返している。
まさにちょうど一年前、この小説を読んだ。
休学を決意し、一年間どう過ごすか考えている時期だった。無根拠な自信と無根拠故の不安が入り交じっていた。
その日は友人の家に泊まっていて、朝日で目が覚めた。でも友人は眠っていて、起こすのも何だからテーブルの上にあったねじまき鳥クロニクルの一巻を窓の光で読んだ。
その部屋は汚かった。安っぽい小さなこたつの上に空のレトルト袋が乗っていた。袋から直接食べたようだ。床には色々なものが散らばっていた。思い出せないけれど。
でもそれはノスタルジーを伴う汚さで、悪くなかった。
そういう状況でねじまき鳥クロニクルを読んで、それから一年が経った。
そして今同じ小説を読んでいる。
本の内容は変わらない。でも、その他は何もかも変わってしまったような気がする。