大審問官とは、カラマゾフの兄弟「プロとコントラ」にてイワンの口から語られる小説内小説。
大審問官(枢機卿)とキリストの考えの違いについての話。
大審問官は人間への愛故に民衆を支配し、彼らを救う。「オレらに従えば、パンにありつけるよ」
キリストは人間への愛故に民衆に自由を与える。そして、信仰表明(Yes Christ)した者を救う。「あなた達(の信仰)は自由だ。それでも私を信じるなら、世界の終わりに救われる」
「地上のパンか、天上のパンか?」がテーマ。これはかなり宗教的だが、もう一段さげて
「支配か、自由か?」と考えると、とても普遍的なテーマであるように思う。
大審問官の台詞で印象的なもの。
「選択の自由という恐ろしい重圧におしひしがれた人間達が〜(略)〜お前の真実にも異議を唱えるようになる」
「自由というあれほど恐ろしい贈り物を受け入れることができなかったからといって、このか弱い魂のどこが悪いというのか?」
自由は弱い人間、つまり、何を為すべきか自分で策定できない人間にとって苦痛であると言う。これはとても身近な問題だ。
例えば就職活動。
リクナビに登録すれば、眼前には7000〜8000の企業がずらりと並ぶ。自由に選べ。普通の人はそんなことできっかよ!と異議を唱えることとなる。
「プロとコントラ」流に言えば、リクルートはキリスト的だ。
迷える就活生が「Recrute the Christ」と信仰表明したところで彼らは地上のパンも天上のパンも保証することはないだろう。それは無責任ではない。彼らは神の子ではない。
電通広告年鑑09-10・インタラクティブ・メディアの項には、情報の自由化によりユーザーの負担が増加したのでそれらの秩序化が必要だ、と書かれている。
リクルートとは逆の方向性だ。