村上龍 「限りなく透明に近いブルー」を読んで
世界の悪意(無意味さ、不条理さ、何でもいい)に耐えられないから、心の中に秩序を作る。それは都市であったり、城であったりする。あるいは友達同士のなれ合いだったりもする。
ある時、都市は破壊される。
圧倒的な現実の力の前には、個人のささやかな秩序など全くとるに足らないものだった。想像力は吸い尽くされ、代わりに重油が満たされる。
しかし破壊の瞬間に、青白く透明になった世界が現れる。透き通った世界の奥に、白い曲線が見える。あれは何だろう?
絶望の中の生と死の臨界、虚無感の中の朝と夜の境界。限りなく透明に近いブルーはその一瞬だけ、世界を油の皮膜の様に覆う「黒い鳥」=「悪意」を透かし、世界の優しさを映し出す。