アーネスト・ヘミングウェイ「老人と海」
それは偏在する苦悩だった。いつでも、どこでも、それはふとわたしの目(?)をかすめるように現れ、心を掻き乱してゆくのだ。
わたしはそれと戦い続けた。
その戦いが歴史性を帯びるほど長い間続いた為に、わたしは、それはわたしとは不可分のものなのではないか、そう考えるようになった。
わたしに属していながらわたしを苛むそれ。
わたしの精子とわたしの卵子が受精しわたしに着床しわたしの血液から栄養を得てわたしが空気の中に出産したそれ。
それはわたしの子供ではないか、そう考えるようになった。